日本もアメリカの様に成人扱いする年齢を引き下げるべきだという意見もあります。
ですが研究者の間ではアメリカの少年法改正は失敗したとして有名です。
これはどういうことなのかについて述べていきたいと思います。
アメリカの少年法の失敗とは?
アメリカは1970年代から少年犯罪について極端に厳罰化を進めました。
その厳罰化とは次のようなものです。
○重大犯罪については、家庭裁判所から刑事裁判所に移送できる手続きを簡略化した。
○はじめから、刑事裁判所の管轄下におく
○検察官が事件を少年裁判所に送るか、刑事裁判所に起訴するかを裁量的に判断できるようにした。
ちなみにアメリカといってもその州によって「成人扱い」になる年齢は違っています。
ミズーリ州&カリフォルニア州→14歳~
イリノイ州→15歳~
ニューヨーク州→13歳オレゴン州→12歳~
※但し、ニューヨーク州やオレゴン州などの様に「殺人の場合は、少年法が適用される年齢でも成年扱いとする」としている州もあります。
※※「実名報道」に関して日本との違いを述べると、法律の規定は各州によって異なっているものの、報道の自由を重んじる(タブロイド誌の報道が過熱化している)アメリカは世論の後押しもあって実名が掲載される傾向にあります。ただし、訴訟大国でもある米国において明らかな報道被害を受けた場合は、日本では比べ物にならないほどの懲罰的な巨額の損害賠償が認められる場合もあるのです。
さて、話がそれましたが、アメリカが厳罰化を進めたことによって社会はどうなったのか?
その事についてまとめてみました。
○厳罰化を行った年代において、少年が犯した殺人事件は2.5倍に増加
○少年の銃規制法違反も激増。
○少年の麻薬犯罪も激増。
○「教育」よりも「刑罰」に重きを置いた為に、少年の再犯罪率も増加。
○逮捕者が増えた為、各地の刑務所が飽和状態に。劣悪な環境で少年が過ごす事になる。
劣悪な環境で刑期を終えた少年達が再び犯罪を犯す。
→そんな社会的不安が広まる中で「自己防衛」の為に銃を持つ人も増加。
日本では銃の所持が認められていないので、この「失敗」がそのまま日本に当てはまるとは必ずしも言い切れませんが、参考にすべき事例かと思います。
海外の少年法の適用年齢は?罰則は?
以下に、アメリカ以外の少年法の現状はどうなっているのかについて述べていきます。
【刑事責任年齢】の比較
イギリス→10歳~ ドイツ→14歳~ オーストリア→14歳~ フィリピン→15歳~
この様に「刑事責任能力」が問われる年齢が日本よりも低年齢の国もあります。
その【刑罰】を考える上で、よく「先進国で死刑を採用しているのは日本くらい」といわれますが、本当でしょうか?
【死刑】を廃止した国
カナダ(1976年に廃止)、メキシコ(1917年に廃止)、コロンビア(1991年に廃止)
フランス(1981年に廃止)、ドイツ(1949年に廃止)、ポルトガル(1867年に廃止)…など
この様に挙げていくと、「先進国」以外にも多数の国が「死刑」を廃止している事がわかります。また、法律として死刑制度があるものの、刑の執行を凍結している国は多い様です。
【死刑存続国】
中国、インド、アメリカ、インドネシア、イラン、日本…など
で、「死刑」を採用している国と、そうでない国どっちが多い??という事ですが、
※世界の人口ランキングの上位10カ国のうち、8カ国。上位20カ国のうち13か国が死刑制度を採用しているので「人口」ベースで考えると「死刑」を採用している方が多数派といえるのですが…、「過去10年間で死刑の執行を行った国」と「そうでない国」の数を比較してみると、「そうでない国」の方が圧倒的に多いのです。
で、そもそも【児童の権利に関する条約(国際条約)】に批准している国では、18歳未満の死刑は禁止されています。
という事実を「少年でも死刑に処すべきだ」という事を主張する人はどのように考えるでしょうか?特に少年の犯罪においては、厳罰化を持って処するよりも教育的支援でもって更正させるべきだというのは、日本のみならず、海外においても必要な視点だといわれているのです。
「日本の少年法は甘い」とよく言われますが、【厳罰化する事が、必ずしも社会にとっていい影響を与えるとは限らない】という事を、米国の事例は示しています。
罪を償うという事は、罰を受けるというだけでは、ないという事は我々は忘れてはならないのではないでしょうか?
他に少年法の記事を書いています。そちらも合わせてご覧ください。